好奇心夫婦

ワクワクする(好奇心を刺戟する)生活に挑戦する夫婦のブログ。夫(又蔵):中小企業診断士・書評等を担当。妻(ハナ):節約・家計管理等を担当

スーパーメガトレンドである格差社会の進展について知ってみると、世界が今までと違って見えて来るカモ

 

 

~超富裕層と新下流層しかいなくなる世界の生き抜き方~

経営戦略コンサルタント 鈴木貴

 

「すべての中流家庭は貧困化する」。この主張から始まる本書は、富の格差が生まれる仕組みとその進化を学ぶことで、今後の世の中がどう変化していくかを論じています。書き方も論理的でわかりやすく、原理原則を押さえようとする本書の姿勢には好感が持てます。現状を受け止め、未来をどう生きていくか、本書はこれからの人生を考える上で参考になると思いました。

 

日本社会において、お金について考えることは意地汚いことだと思われる傾向があります。しかし、お金の力は絶大です。実際に、私達の人生はお金の有無によって大きく左右されます。現代社会でお金を使わず、稼がずに生きていくのは難しいでしょう。では、どれほどの人が「お金」について理解しているでしょうか。お金自体の性質や、「搾取」のメカニズムなどを理解することが、現代社会で生き抜くのに大事かもしれません。

 

未来の富を考えるキーワドは以下の三つ

①「富のグローバル化

人工知能がもたらす「人的資本価値の縮小」

③「中流の下ないしは新下流層の激増」

 

このキーワードを理解するために、第一章では「富の食物連鎖」の歴史を振り返ります。

そもそも格差とは、農業が始まり生産性が高まったことで生じた「穀物の余剰」が根源です。狩猟採集生活から定住生活に移り、大きな集団を形成して、集落を作りました。集落にはやがてが生まれ、やがてになり、一部の人間に富が吸い上げられていきます。王は狩猟民族との交戦に勝てるよう武力を有し、社会インフラの整備も行います。そして、王を支える上級管理職も生まれます。この王>管理者>民というのが現代も続く富の食物連鎖の基本構造なのです。

 

その後、貨幣金利掛け(借金)株式会社と様々なイノベーションが生まれ資本主義が発展していきます。しかし、基本構造は変わっていません。私たちができることは、この食物連鎖の少しでも上に行くことを目指すだけです。

 

第二章では、現代社会の分析です。現代社会において、富が一部の人に集中していることを論じていきます。そのメカニズムは第一章で論じた基本構造によるもので、さらにそれがグローバル化していることで格差拡大が加速していきます。それは、金持ちは金利を理解してるため、収入を消費よりも、グローバルな投資に回してさらにお金を稼ぐからです。

 

このような流れで、本書ではさらに

  • 資本主義と搾取の仕組み

  • サラリーマンのための資本論

  • 資本家から見た「仕事消滅」

  • 下流層拡大へ向かう世界

  • 21世紀の投資理論

  • お金の新しい基本法

と話が進んでいきます。

これらの流れは資本主義としては、歴史的に必然性を持ったものなのかもしれません。これに対応するには、私たちも資本家側に回ること。それも、アメリカの会社の資本家になることを勧めています。

 

正直、サブタイトルの~超富裕層と新下流層しかいなくなる世界の生き抜き方~に明確な答えを提示しているとは思えません。しかし、本書を読むことで、歴史や原理原則を知り、自分で考えるための材料は手に入るのではないでしょうか。中流以下の私たちに必要な教養がこの本には詰まっていると思います。オススメの一冊です。